こんにちは。
今回は地域枠を利用して医学部編入を受験する方が知っておくべきことについてお話します。
編入受験生としましたが、一般受験生にも当てはまる内容だと思います。
地域枠を使うと実際かなり有利に受験を戦えますし、僕も地域枠で合格しました。
先の見えない医学部受験を短期間で終わらせるにはいい方法だと思います。
医学部に入学して卒業が見えてきた時に、地域枠合格者のより具体的な卒業後の進路についてわかってきました。
地域枠を利用する受験生の方にとって、「医学部合格前に知っておくべきこと」だと感じたので共有します。
地域枠を考えている方はぜひ読んでみてください。
まず地域枠とは何か?
まず「地域枠って何?」という方に地域枠について説明していきます。
地域枠について説明
地域枠とは
医学部地域枠推薦(いがくぶちいきわくすいせん)とは、僻地の医者不足を解消するため各地方の国公私立大学医学部医学科が設置している推薦入試枠のことである。
つまり「地域の医師不足を解消するために、一般枠とは別にその県の出身者などを対象にしたり、卒後の勤務をその県に限定する枠を設けてるよ」ということです。
当然、受験者が制限されるので倍率・難易度は下がる傾向にあります。
各大学の受験要項を読んでみる
実際にいくつかの大学(全てでは無いです)の地域枠に関する受験要項を読んでみましょう。
ここでは編入試験の場合の「卒業後の要件」に限って要項を見ることにします。
※気になった方は必ず大学のHPにいって最新の受験要項を確認してください。
①弘前大学
① 卒業後,直ちに弘前大学医学部附属病院又は医学研究科関連施設の臨床研修プログラムにしたがって臨床研修を行うこと。
② 上記臨床研修修了後,引き続き弘前大学医学部附属病院又は医学研究科関連施設で医療に従事すること。
③ 上記①②の定めの下で,臨床研修開始後少なくとも12年間医療に従事すること。
④ 「医療従事」の範囲,医学研究科関連施設及び「医療従事期間中」の詳細について,別に示す確約書内容を遵守すること。引用:https://www.hirosaki-u.ac.jp/~nyu/02_hennyugaku/02-3shiryo/31i_hennyuyoukou.pdf
②群馬大学
・ 地域医療枠合格者は、群馬大学医学部や群馬県等が企画する県内医療に関する特別プログラムに参加します。
・地域医療枠合格者は、卒業後8年4ヶ月間は、群馬大学医学部附属病院を含む群馬県内の特定病院の中から選択し、臨床研修及び診療業務に当たります。医師としての柔軟なキャリア形成が可能です。後出のキャリアモデルを参考にしてください。引用:http://www.med.gunma-u.ac.jp/admissions/transfer/med31.pdf
③浜松医科大学
エ:静岡県、愛知県、山梨県又は長野県内の高等学校(中等教育学校を含む)を卒業した人で、将来、静岡県の医療に従事しようとする強い意欲を持っている人。
オ:卒業後は、浜松医科大学が指定する臨床研修病院(浜松医科大学医学部附属病院を含む)で、卒後臨床研修(2年間)を受けること及び浜松医科大学の専門研修プログラムに登録することを誓約できる人。
④滋賀医科大学
近畿圏及び滋賀県に隣接する県(福井県、岐阜県、三重県)の高等学校を卒業し、地域医療に強い意欲を持ち、卒業後、滋賀県内の病院に勤務する意思のある者とします。
この地域枠で出願する場合は、編入学志願票と所定の用紙「滋賀県の医療へ貢献、県内病院での卒後臨床研修の誓約にかかる確約書」により意思表示してください。
引用:https://www.shiga-med.ac.jp/sites/default/files/2018-03/30bachelor.pdf
弘前大学、群馬大学ではかなり具体的に卒後の勤務先や年数のしばりについて言及されています。
一方、浜松医科大学は、
・卒後臨床研修(2年間)を受けること
・浜松医科大学の専門研修プログラムに登録すること
の2点を地域枠の条件としています。
また滋賀医科大学は卒業後、県内病院で研修をすればしばりが無くなるかのようにも思えます。
これらは前2大学に比べるとしばりがゆるい様に思えます。
しかし実際に医学部に入学してみて、例として出したこの4大学の卒業生が取る道は1つだとわかりました。
それは「その大学の医局に入局すること」です。
弘前大学、群馬大学では明確に入局することが示されていますが、
滋賀医科大学では「初期研修後は希望したら大学出れそう。」という印象を持つかもしれません。
しかし相当大学に反抗し、喧嘩別れしなければおそらく無理です。
その理由を次に説明します。
地域枠合格=卒後の入局が前提
地域枠の合格者という時点では大学側は「入局すること」を前提としています。
しかしそれは受験生にはあまり知られていないし、入局とはどのようなものかも知られていません。
「地域枠=入局すること」
これは知っておいてください。
この認識の食い違いで、大学側と揉める編入卒業生が少なからずいます。
では入局とはどのようなものでしょうか。
入局とは何か
入局とは簡単に言うと、医局、すなわち
「教授をトップとした人事組織」
引用:医局 - Wikipedia
に所属することと言えます。
各診療科ごとに医局と呼ばれるものが存在し、教授、准教授等の役職があります。
入局することで、大学病院での診療、専門医所得などのための教育、関連病院への派遣や医局バイトの割り当て、学生への授業の割り当てなど、大学病院に必要な機能を分担します。
1度入局すると法的な制限はありませんが、基本的にすぐに辞めることは無く、
医師の友人に聞いた話しになりますが、10年程度は所属するようです。
(強引に辞めるとその大学の関連病院に勤められなくなったり、様々な障害があるようです。)
つまり、卒後10年間程の医師の勤務先やバイトなどは医局によって決められるのです。
また医局ごとに関連病院というものを持っており、他の大学と勢力を争う形になっています。
そのため、医師個人が「A病院は救急に強いから勉強のために働いてみたいな。」と思っても、A病院の救急科がその医師の所属する医局の関連病院でなければ基本的には働くことはできません。
医師以外の世界の方から見るとおかしい話しだと思いますが、医師の勤務先はこのように決められている側面が確かに存在します。
そのことを知らずに地域枠で合格してしまうと、自分が思い描く卒後のキャリアと大きくかけ離れてしまいます。
入局って良い?悪い?
ここまで医局や入局について話してきました。
入局することは悪いことなのでしょうか?
僕はそうとは考えていません。
外様として他大学や、市中病院(医局と関係をもっていない病院もあります)で初期・後期研修するよりも、自分の出身大学の医局に所属することで、知識や技術の向上や専門医取得の道はある程度確保されているように思います。
(レールが敷かれているという感じ。)
もちろん過疎地域などの、医師が集まりにくい地域にも派遣という形で医師を送り、
地域の医療を守っているという役割もあります。
医局からの派遣がなければ医療が成り立たない地域も多いでしょう。
しかし、
・自分のやりたい診療科が大学に無いor得意としていない
・他の大学や病院で専門医取得のために研修したい
などに当てはまる方は、「地域枠での合格=入局」と考えて、
受験前から関連病院を調べたり、しばりがない大学を受ける、といった選択肢も視野に入れるべきです。
まとめ
・「地域枠=入局を前提としている」と考える必要がある。
・入局とは教授をトップとした人事組織に所属することで、勤務先など医師としての生活が決まる。
・地域枠を使うか決める前に、自分のやりたい診療科は何か・受験する大学病院の得意とする診療科は何か、関連病院はどこがあるか、など事前に調査するべき。