こんにちは。
先日、OSCEの模擬患者をしてきました。
OSCEとは
OSCE(オスキー、Objective Structured Clinical Examination)は、客観的臨床能力試験のこと。日本の医学部、歯学部、薬学部6年制課程の学生が臨床実習に上がる前に、この試験とCBTの2つに合格することが、臨床実習に進むための条件となる
医学生や歯学生、薬学生、獣医学生は病院で行う臨床実習に参加する前に、
最低限の知識、臨床能力が身についているかを確認するためのテストを受けます。
CBTではコンピューターで行われるテストで知識を、
OSCEでは医療面接や診察をして臨床能力を評価されます。
これに合格することで、学生が医行為を行うことの違法性を粗脚する意味合いがあります。
また2020年から正式に採用される予定の臨床実習後OSCEというものもあります。
これは臨床実習後にOSCEを行うことで、臨床実習の効果の評価や、学生の学ぶ意欲を引き出すことを目的としています。
参考:医学書院/週刊医学界新聞(第3215号 2017年03月13日)
今回は臨床実習後のOSCEの模擬患者をしてきました。
今日はその時感じたことについて書いていきます。
1.OSCEの模擬患者に参加した目的
大きく分けて3つの目的を持って参加しました。
1-1.試験会場の雰囲気を知る
まず試験会場の雰囲気を知る目的です。
臨床実習後OSCEは落とす目的の試験ではないため、そこまで緊張感はないかもしれません。
しかし実際の会場の空気や採点の様子などは参加してみる以外に知る方法がありませんからね。
この目的に関しては参加してみて正解でした。
・無言で試験官に評価される独特の雰囲気
・自分が主体となって診察していかなければならない緊張感
・うまくできなくてもすぐ次のセクションに行かなくてはならない焦り
などリアルに感じることができました。
皆さんも医学部に編入したら一回は絶対参加したほうがいいです。
1-2.どんな課題が出るかを知る
2つ目の目的がこれです。
同じ課題が可能性はすごく低いと思いますが。
ただ、課題の方向性だったり問われる知識というのは参考になる部分も多いです。
ここで当日の課題を詳しくお伝えすることはもちろんできませんが、
僕が担当したセクションの課題は、
「患者の経過と症状の一部が与えられて、問診と診察をして、上級医への報告として鑑別疾患を上げて次の検査の提案をする」
というものでした。
1-3.実際に学生がどれくらいできているかを知る
上記の課題を見て皆さんどう感じたでしょうか?
難しいですよね・・。
やはり受験生もみんな苦戦している様子でした。
何人かの試験の様子を見ると、
「この人はここまで診察できてすごいな。」とか
「この人はあんまり問診の内容足りてないけどはきはき話して印象いいな。」
などわかってきます。
自分が受験生として参加する時に取り入れたい部分もたくさんありました。
また「これくらいできてればまず安心だな」というラインもわかりました。
これは評価が高そうと思ったポイント
・はきはき相手の顔を見て話す。
→診察、問診に足りない部分があってもすごく印象が良いと評価者の先生もおっしゃっていました。(おそらくそういった評価項目もありそう)
・単純に問診、診察がしっかりでき、鑑別疾患が多くあげられる。
→問診内容と症状から、それぞれの鑑別疾患についての可能性まで言及しているとすごいなと思いました。
・問診と診察どちらかに偏りすぎないこと。
→問診はある程度決まった型があるのであまり差異はありませんでしたが、診察が足りない場合が多かったので、診察をしっかりして鑑別できていると高評価だと思います。
2.実際やってみて感じたこと
評価が高いと思った3つのポイントと関連していますが、
「問診、診察をするためには鑑別疾患が挙がっていなければならない」
ということを一番強く感じました。
例えば、腹痛という患者さんがいたとします。
腹痛をきたす疾患は山のようにあり、
腸閉塞、虫垂炎などの消化器疾患、腹部大動脈瘤破裂といった循環器疾患、異所性妊娠などの産婦人科疾患、心因性などなど・・・挙げればきりがありません。
それらを鑑別するために問診、診察するわけですが、
その段階である程度鑑別疾患が挙がっていなければ、その鑑別のために特異的な診察や検査などを選択して行うことはできません。
OSCE受験生で診察で困っていた方はおそらく、
①鑑別が挙がらない→何の診察をしていいかわからない。
②鑑別は挙がっている→その鑑別のためにどんな診察をしていいかわからない。
のどちらかで、①の方が多いと思います。
普段の系統講義、定期試験対策、国家試験対策では、
「疾患→病態→症状→検査→治療」という流れで学ぶ訳ですが、
診察(OSCE含む)では「症状→検査→診断→治療」となっており、
症状と検査が系統講義の流れと逆になっています。
一見なんてことないように思えるかもしれませんが、思考の方向が逆になるので面食らうというか、思考法そのものを変えないといけないので大きなことです。
しかも特異的な症状がある疾患なんてほんのひと握りです。
診断の際には常にこの「症状→検査→診断」の思考をすることになります。
3.これからの学習の方針
これからの学習の方針としては、
「疾患の全体像を捉える」+「症状の細部まで把握する」
のが重要なのかなと思います。
「疾患の全体像を捉える」については、好発年齢、性別、典型的な経過
など症状以外に患者像が想像できるような情報も重要視することです。
また「症状の細部まで把握する」は、例えば腹痛と言っても、
ズキズキするのか、じんわり痛いのか、いつから痛いのかといった性状まで把握することで疾患の鑑別がしやすくなります。
さらに鑑別疾患が挙げることができ、その病態まで理解できていれば診察、検査はそこまで悩まないはずなので一石二鳥です。
また症候別に疾患を鑑別していく書籍を読むことも高学年・研修医以降に重要となってくると思います。
4.まとめ
- OSCEの模擬患者に参加して「症状→診断」の難しさを感じた。
- 今後は「症状→検査→診断」の流れを達成できるように学習する必要がある。
- そのためには、「患者の全体像」+「症状の細部までの把握」が必要。